時そば
もういくつ寝るとお正月?
今年も残すところあとわずかになりました。
最近、蕎麦よりうどん派の息子に合わせて、
今年は年越しうどんになりそうです。
そばといえば、
落語で「時そば」という噺があります。
どんな話なのでしょうか・・・
11年ぶりにシリーズ落語やってみます・・・
昔は二八(にはち)そばというものがあって、
十六文で商いをしておりました。
その由来は二八の十六で二八そばだとか、
そば粉が八分でうどん粉が二分だから、
二八そばという人もいます。
冬の寒い夜に屋台に飛び込んできたひとりの客。
「おう、そば屋さん、なにができるんだい?
え?花まきにしっぽく?」
「じゃあ、しっぽくをこしらいてくんねえ」
解説:
「花まき」海苔の入った蕎麦
「しっぽく」ちくわなどの具がのった蕎麦
「うーん、どうも寒いじゃねえか」
「ええ、たいそう冷え込みますなあ」
「どうでえ、商売のほうは?
なに?ぱっとしねえか?
まあ、そのうちにゃあ いいこともあるさ」
「商売は商い(あきない)と言うから
飽きずにやらにゃだめだ」
「ありがとうございます。
お客さんはうまいことをおっしゃいますねえ」
待っている途中、食べている時も
「看板はあたり屋で縁起がいい」
「できるのが早い。気が短いからこうでなくちゃ」
「割り箸を使っていて嬉しいね」
「いいどんぶりを使っている」
「汁の具合がいい」
「ちくわを暑く切ったねえ、こうでなくちゃ」
などと調子よくそば屋を褒める。
十六文を支払うのに小銭で間違えるといけないからと
店主に手をだすように求める。
「いいかい、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、
いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、何刻だい?」
「へえ、九刻で」
「とお、十一、十二、十三、十四、十五、十六だ。」
勘定を払ってすーっといっちまいました。
これを一部始終ぼぉーっと見ていた男
あの野郎、まあよくしゃべりやがったな。
しかし子供じゃあるめえし、
十六文ぽっちの銭を間違えるやつがあるもんか。
それにしてもおかしなところで時刻を聞きやがったな。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、
ななつ、やっつ、何刻だい?九刻で。
とお、十一、十二、十三、十四、十五、十六…
あれ、少なく間違えて一文ごまかしやがった!
うまくやったもんだ。
しかしこいつはおもしれえや、おれもやってみよう。
その翌日、
小銭を用意してそば屋を呼び止めました。
「おい!そば屋さん、なにができるんだい?
え? 花まきにしっぽくか?
じゃあしっぽくをひとつ。 ・・・寒いねえ」
「いえ、今晩はたいそうあったこうございますが・・・」
そうだ、寒いのは昨日だった。
「どうだい?商売のほうは?」
「ええ、おかげさまでうまくいっております。」
なんだい、いいのか?
飽きずに・・・ ってのができねえじゃねえか。
遅いしぬるいし、使い回しの黒ずんで先が濡れた箸、
縁の欠けたきたない丼、しょっぱい汁、
うどん顔負けの太いそば、
とても食べ切れる代物ではない。
と、こんな調子で昨日の旦那の真似をしようとして
ちんぷんかんぷんなことを繰り返すのでした。
もうよそう。
「おい、いくらだい?」
「へえ、ありがとうございます。十六文でございます。」
「小銭だからまちげえるといけねえや。
手を出してくんねえ。勘定わたすから・・・」
「へえ、これへいただきます。」
「じゃあいいかい・・・
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、
むっつ、ななつ、やっつ、何刻だい?」
「へえ四刻で」
「いつつ、むっつ、ななつ、やっつ・・・」
どうぞ良いお年をお迎え下さい。
大和ブログ:シリーズ「落語」
過去のラインナップ
2008-01-25 まんじゅうこわい
2010-02-22 猫の皿
2010-08-07 動物園
2011-04-13 鼻ねじ
2011-12-21 芝浜
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